Dr Makoto’s BLOG

2か月ごとに薬を処方する ~特定医療費制度の「高額かつ長期」

神経内科2020.08.02

北海道の夏らしいカラっとした暑さが続いていますね。
気付くと日が暮れるのがだんだん早くなっていて、いまの陽射しを大切に!と惜しむようになってきています。
                                                                                                            
パーキンソン病(ホーエン・ヤール3度以上)や脊髄小脳変性症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症など、当院の患者さんでは指定難病医療費受給制度、いわゆる難病手帳を利用している方が多くおられます。
医療費自己負担に上限がつくようになる制度で、ながく治療を続けるためにはあると助かるものですから、対象となる方へは診察のなかで申請をすすめています。
 
一言で「医療費」といっても様々なものが含まれます。神経難病患者さんが支払う医療費の代表的なものとして以下のようなものがあります(国が定めた費用です)。
 再診料:診察にかかる料金
 医学管理料・在宅指導管理料:難病をながく安定させるために必要な指導を受けるための料金
 薬剤費:内服や注射・点滴などにかかる料金
 脳血管リハビリテーション料:リハビリテーションにかかる料金
 検査料:MRIや採血などにかかる料金
 訪問看護・訪問リハビリテーション料
指定難病医療費受給者証をお持ちの方は、医療費総額の1割もしくは2割を自己負担することになります。
 
たとえば、パーキンソン病の患者さんが定期的に通院をするとき、医療費のなかでは、薬剤費の占める割合が大きい方が多いように思います。パーキンソン病は次々と新しい治療薬が使えるようになっていますが、如何せん値段の高い薬剤が多いことが悩ましいところです。レボドパ(マドパー®やドパコール®)やジェネリック医薬品であれば価格が抑えられますが、たとえばニュープロ®18㎎は月23,800円(10割負担)、ノウリアスト®20㎎は月21,900円(10割負担)、トレリーフ®25㎎は月31,200円(10割負担)とかなり高額になります。ながく治療を続けていくために費用の話は避けて通ることができず、このような薬を開始するときには、あらかじめ自己負担にかかる値段をお伝えするようにしています。
 
特定医療費受給制度では、高額な治療を長期にわたって必要とする方に、自己負担額の上限を軽減する仕組みがあります(高額かつ長期)。
 自己負担上限額が10,000円の場合 5,000円
 自己負担上限額が20,000円の場合10,000円
 自己負担上限額が30,000円の場合20,000円
そして、以下の方が「高額かつ長期」として該当します。
 自己負担上限額が10,000円(階層区分が一般所得Ⅰ)以上の方
 指定難病の医療費総額(10割負担)が5万円を超える月が年に6回以上ある方
 
たとえば、毎月薬の処方を受ける場合は、先ほど提示しましたように、ニュープロ®18㎎は月23,800円(10割負担)、ノウリアスト®20㎎は月21,900円(10割負担)、トレリーフ®25㎎は月31,200円(10割負担)と、再診料や医学管理料などと合計しても毎月5万円を超えない場合があります。
 
ところが、2か月まとめて処方をすると、ニュープロ®18㎎は47,600円(10割負担)、ノウリアスト®20㎎は43,800円(10割負担)、トレリーフ®25㎎は62,400円(10割負担)となり、再診料や医学管理料などと合計すると5万円を超えるようになります。

この2か月処方を6回続けることではじめて「高額かつ長期」に該当するようになり、自己負担上限額が軽減されるようになります。同じ治療薬を内服していても、1か月処方とするか2か月処方とするかで自己負担の上限が変わってくるという、ちょっと複雑ですが、利用するとメリットが大きい仕組みです。
 
状態が安定している患者さんが自己負担を軽減するために、このような2か月処方も大事な方法であることをご紹介しています。ご自分の場合はどうなんだろうと、気になる方はお気軽にスタッフへご相談ください。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩