Dr Makoto’s BLOG

アパシーと治療満足度の関係

パーキンソン病2022.02.21

この日曜日は朝からテレビに釘付けとなり、オリンピックのカーリング応援を楽しみました。
ロコ・ソラーレの素晴らしい活躍に、同じ道産子として特別なエネルギーを貰えた感じがしています。
 
先日クリニックにいらしたパーキンソン病患者さん。
もともとは元気はつらつとした女性で、日頃から友人と麻雀を楽しむなど、とても社交的に過ごしておられました。ところが、ここ1-2年で手がふるえるようになり、麻雀のパイもつかみにくくなってきました。ひととおりの日常生活はこなしておられますが、全般に時間がかかってしまうとのこと。加えて、気分が優れずに麻雀も楽しめない、食が細くなって疲れやすい、夜に途中で目覚めることが増えてしまいました。
 
他院でパーキンソン病の診断でドーパミンを補充するレボドパ治療が開始されました。彼女やご家族もなるべく外出したり、運動したりと日頃から刺激を入れようと努力しておられます。それでも、どうも治療の満足度が高くない様子です。診察をしますと、パーキンソン病でみられる手のふるえや筋肉のこわばりはありますが、歩幅はしっかりと保たれ、診察台からの起き上がりもご自分でしっかりと出来ているのです。
 
一見しますと、パーキンソン病の運動症状は早期の段階で、十分量のレボドパ治療も受けています。それでもご本人の満足度が高くないときは、どうやって対応していくとよいのでしょう?このようなときは、さらにレボドパを増量して手のふるえや動きを良くしても、なかなか治療満足度はあがってこないと感じています。気分的な落ち込み、意欲の減退、楽しめないといった症状が治療満足度を下げているためです。一般に抑うつ状態とも呼ばれ、私たちは「アパシー」と呼びますが、パーキンソン病患者さんには比較的多くみられる症状です。
 
アパシーはドーパミンの補充でもある程度回復していきますが、彼女のようにすでに十分量のレボドパ治療を受けていても続く場合には、無理にレボドパを増やしても満足度は高くならない印象を持っています。彼女とご家族へ、セロトニンやアドレナリン分泌を促す治療薬を加えることを提案しました。脳内のセロトニンやアドレナリンが増えていくと、きっとアパシーが良くなり、気分や意欲、睡眠や食欲、疲れやすさも軽くなっていくことでしょう。
 
ちなみに、この薬の効果は2-3か月経って安定し、効果を感じられるようになります。「〇月頃にはだいぶ楽になってきますよ」とあらかじめ時期を明確に提示すると、患者さんやご家族も安心して治療を頑張ろうという気持ちになるようです。雪が溶けて、暖かくなってきた頃には、きっと本来のはつらつとした彼女の姿が戻ってくることでしょう。
 
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩