Dr Makoto’s BLOG

スピードと利便性 外来での点滴・注射治療

クリニック2017.08.23

最近では「外来での抗がん剤治療」をよく耳にするようになりました。
病気は異なりますが、神経難病への点滴・注射治療も、効果・安全性に加え、
神経の働きを最大限に維持・回復させるための「スピードと利便性」が大切と感じています。

多発性硬化症(MS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、脊髄小脳変性症(SCD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)
などの病気では、進行を抑えたり、病状を回復させるための点滴・注射治療が保険で認められています。
ただ、これらの点滴治療は入院して行う施設が多いため、
仕事をしていたり、家庭をあけることが難しい患者さんにとっては負担になることが多いようです。

たとえば、MSの調子が悪くなったとき(再発)のステロイド点滴治療を、クリニックでは外来で行っています。
海外ではステロイド治療を外来で行うのがスタンダードですが、最近日本でも少しずつ導入する施設が増えてきています。
MS患者さんは20-40歳くらいに多く、仕事や家庭生活で時間をつくるのが難しいためになかなか入院できず、
再発期治療を逸してしまっていたような方にも、外来でスムーズに点滴治療を受けていただけるようにしています。

また、CIDPには「免疫グロブリン大量静脈注療法(IVIg)」という、
その名の通りグロブリン製剤を大量に点滴する治療が、筋力回復に効果があります。
この治療は以前からあったのですが、昨年から「CIDPの維持療法」という治療ができるようになりました。
これまでは、CIDPの調子が悪くなってから5日間点滴をして回復させる方法しかありませんでしたが、
今回新たに、「月に一度定期的に点滴をすることで悪化を防ぎ、調子がよい状態を維持できる」という画期的な治療です。
点滴時間はおよそ7時間かかりますが、(仕事が休みの)土曜日月1回の点滴で調子を維持できるということで、
とくに仕事をしている患者さんに大変好評です。
点滴の最中は眠ったり、本を読んだり、思い思いに過ごされているようです。

そのほか、進行予防薬の点滴・注射として、
MSへのタイサブリ点滴(月1回)、ALSへのラジカット点滴(月10回)、SCDへのヒルトニン注射などもおこなっています。

患者さんの病状によっては、入院での治療をすすめることもありますが、
外来での治療が可能な方には、スピーディーに外来点滴治療を行うことが、病状を安定させるためにも重要と考えています。
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩