Dr Makoto’s BLOG

ぜんぶが病気の症状?

クリニック2018.06.15

今日クリニックにみえた脊髄小脳変性症(多系統萎縮症)の患者さん。
普段の仕事をこなしながら、一方でラジオのパーソナリティーで活躍したり、ライブ活動で歌を歌ったりと、とても情熱的な方です。

脊髄小脳変性症のために、おもに小脳の調子がよくなく、歩行時のふらつきや呂律のまわりにくさなどを感じておられます。病気の診断を受け、どう対処したらよいか途方に深く暮れているときに、リハビリテーションを希望で当院を受診されたのです。

クリニックを初めて受診した半年前は、発症して間もないのに、動き始め・歩き出すとき・方向転換をするときのふらつきが目立ち、また特に話し始めるときに呂律が上手くまわらず、会話で声の大きさが安定しない印象がありました。
実際の小脳の調子だけでは説明のつかない、ふらつき・呂律のまわりにくさを拝見し、これはすべてが病気そのものからくる症状ではなく、焦りや不安といったものがふらつき・呂律のまわりにくさに影響していると感じていました。

通院して半年、病気との向き合い方を毎日模索されてきたことと思います、本日の定期受診では「クリニックに通院してから多くの情報やノウハウを知り、精神的に落ち着き、だいぶ症状が良くなりました」と話しておられました。

 「ふらつき」「呂律がまわりにくい」、いずれも脊髄小脳変性症に多くみられる症状ではありますが、病気からくるふらつき・呂律のまわりにくさが、焦りや不安といったもので増幅されてしまっていたのだと感じています。小脳の病気とはいえ、脳は全体でネットワークを作っており、とくに小脳は前頭葉と密接なネットワークがあると考えられています。焦りや不安によって前頭葉の調子が変化してしまうことで、実際の小脳症状以上に、ふらつきや呂律のまわりにくさが強く出てしまうこともあります。

とある病気の診断を受けると、すべてが病気そのものからくる症状と一括りに感じてしまいがちですが、ひとつひとつ症状をほどいて整理すると、様々な要因から症状が出てくることがみえる。改めて実感させていただいた一日でした。 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩