Dr Makoto’s BLOG

目にみえないもの 神経内科

神経内科2016.12.10

当クリニック、神経内科で診療している疾患の代表的なものに
パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症があります。
いずれも神経難病と言われる病気ですが、これらの共通点は何だと思われますか?

それは、「目に見えないもの」であるということです。

パーキンソン病では「動きが遅くなった」「覇気がなくなってきた」「転びやすくなった」
脊髄小脳変性症では「しゃべりにくくなった」「ふらつくようになってきた」
筋萎縮性側索硬化症では「力がはいりにくくなってっきた」「体が痩せてきた」
というような症状を訴えられる方が多いように思います。

このような患者さんが病院を受診するときに、多くの方は
「脳梗塞が心配」で脳神経外科を受診するものの「脳のMRIは正常で安心してください」
「頸椎が心配」で整形外科を受診するもののの「頸椎のMRIは正常ですので安心してください」
「うつ病が心配」で精神科・心療内科を受診するものの「うつ病の心配はありませんので安心してください」と言われることがあります。

例えば高血圧は血圧を測定することで分かりますし、
糖尿病であれば血液検査、脳梗塞や椎間板ヘルニアであればMRI検査で分かることが多いです。
でも、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症は一般的な検査では異常がつかまらないことが多いのです。

神経内科に初めて来られる患者さんの多くは、すでに他の科を受診されてから来られる方がほとんどです。
これは神経内科がまだ十分に知られていない、また神経内科を診療している病院・診療所が少ないことも影響していることは確かです。

神経内科を受診して、神経学的診察をして初めて
筋肉の固さが固く(筋固縮)、姿勢バランスが良くない(姿勢反射障害)のでパーキンソン病が考えられたり、
手足の細かなバランスがとにくく(失調)、眼の細かなふるえ(眼振)から脊髄小脳変性症が考えられたり
手足の反射が出やすくなり(腱反射亢進)、筋肉がさざ波立つように動く(線維束攣縮)から筋萎縮性側索硬化症が考えられたりします。

パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索索硬化症に限らず、
多発性硬化症、筋ジストロフィー、慢性炎症性脱髄性多発神経炎などもふくめた神経難病の患者さん・ご家族は
驚き・悲観・悔しさ・不安・拒絶など、とてもここでは書ききれない、言葉では表現できないような感情を経験されてきていると察します。
ただ、やっと診断がつくことで、それまでもやもやと霧の中をあるいているような感じから、少しだけ前が見えるようになるのかもしれません。

神経難病の治療はここ10年でも格段に進歩していますので、現在では症状を和らげることも十分可能となってきています。
それに加えて、
「つらい症状を理解してくれる」
「自分にあった治療法、リハビリテーションができる」
「困っている症状にどう付き合えばよいのか相談できる」
「家族の思いを伝えることができる」
「仕事や進路のことを相談できる」
「家計や生活に役立つサービスを紹介してくれる」

このような安心感は、どのような病気になっても励みになりうることと思いますが、
とくに神経難病の患者さんと接する神経内科の多くの施設で大切にしていることではないかと思います。

「目にみえないもの」を理解・共感しようとしながら診療していくのが、神経内科の大きな役目であると私は思っています。
そこには知恵を振り絞ってサポートしていく覚悟が私たちスタッフに求められており、
当クリニック・北祐会神経内科病院はその自負を持ちながら毎日の診療にあたっています。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩