Dr Makoto’s BLOG

暑い夏の北見で ~地域の保健師のこと

神経内科2025.07.07

北海道で暑い・暑い夏がはじまりました。
猛暑日を記録した日のことです。診療で北見に着いた途端、もの凄い熱波がお出迎えしてくれました。この暑さです、日中に外を出歩く方は少ないようで、通院する患者さんには受診を控える方もおられました。「北海道で本当に暑いのは1週間」なんて言ったのは昔のこと、北海道の夏は確実に変わっているようです。
 
最近、地元の北見へ戻ってこられる神経難病患者さんに初めてお会いする機会がありました。これまでながく精力的に仕事に励んでこられ、日常生活や仕事へ影響が出てきているなか、懸命に治療を続けておられます。伺うと、前医で今後の治療や見込みなどを聞いて、頭では理解しっかりされていますが、なかなか症状が快方へ向かわないことに途方に暮れた様子です。今回の診察は、患者さんとご家族に加えて、これまで関わってきた保健師も同行されました。
 
神経難病の診断がついてから、患者さん・ご家族が治療やケアを受け入れていくこと、生活様式を変えていくことは簡単でなく、時間を要することと感じています。通院して治療を続けるだけでも、時間的、経済的、身体的、精神的に大変な労力を要します。「この治療を頑張って続けていって、症状が落ち着いたら、仕事を再開したい、今のままの生活を続けていきたい」こう願うのはごくごく自然なことではないでしょうか。
 
ところが、治療が難しく、進行性の病気の場合はどうなるのでしょう。患者さんの頭のなかでは今後の見込みが分かっていても、実際に進んでいってしまう症状は到底受け入れることができません。神経難病患者さんは、病院でおこなう治療のほかに、介護保険制度でケアマネジャーがついたり、訪問看護師が関わって身体や精神面でのケアをしていくことが一般的です。それでも「まだ自分は大丈夫」といった葛藤や、仕事や家庭生活での立ち位置、他にもたくさんの事情が絡んで、ケアマネジャーや訪問看護師にまでたどり着けない患者さんもおられます。
 
幸い、この患者さんには、早い時期から地域の保健師がサポートに入っています。難病指定を受けると、早い時期から地域の保健師が関わる仕組みになっており、ケアマネジャーや訪問看護師を依頼するというステップまでたどり着かなくても、保健師がケアに加わっていきます。まずは病院・医療機関と保健師が中心になって患者さん・ご家族のケアをしていき、気持ちがある程度落ちついてから、ケアマネジャーや訪問看護師を導入していく。病院・医療機関はどうしてもケアスタッフ(ケアマネジャー・訪問看護師など)を早めに入れようと勧めがちですが、大切なことは患者さん・ご家族が時間をかけて、納得のうえすすめていくことと感じています。

今後患者さんの生活する場所が変わり、保健所も変更となりますが、すでに患者さんのケアについて手厚い情報が引き継がれているようです。私も自信をもって患者さん・ご家族の治療・ケアに入れることに感謝しています。
 

~大雪山・白雲岳からの雪渓模様2025

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩