Dr Makoto’s BLOG

馴染みと習慣 ~新しいものへの興味とトライ

パーキンソン病2019.11.18

先日クリニックに来られたパーキンソン病患者さん。
彼女がクリニックのリハビリテーションに通い始めて、2年近くが経とうとしています。

とってもリハビリテーションに熱心な方で、その豊富な知識や経験を私もよく参考にさせていただいています。
以前ブログでご紹介したストレッチポールなどのリハビリグッズを自作したり、最近では動画で色々なストレッチやエクササイズを調べては実践しているそうです。

驚くべきは、その情報収集力の高さ。毎月の診察で「この動画の、肩をまわすこのストレッチが良い」とか、「自分で編み出した、太腿から腰を伸ばすこのストレッチが効く」と教えて下さいます。

お話しをしていますと、もともと新しいことが好き、そして凝り性なところがあるとのこと。好きこそものの上手なれ、彼女の表情からは楽しさが手にとるように伝わってきます。毎朝家の玄関で動画をみながらしているというストレッチは、最近寒くなったためにお休み中のようです。ひとつのことをながく続けることも大切かもしれませんが、彼女のように新しいものへ興味を持ち、トライして、その中で良いと感じたものをピックアップして実践していく。なかなかできることではなく、とても羨ましく感じています。

振り返ってみますと、私自身は馴染みのあるもののほうが好きというか、安心することもあり、ついつい定番におさまることが多いような気がします。行きつけのお店、お気に入りのコーヒー、クローゼットには似たような色の服、休日の習慣…。

人は新しい環境にさらされると多少なりともストレスを感じるため、ブレないものに安心感を求める、と聞いたことがあります。この「予定通りの快感」は安定していて、裏切らないことが多いですが、見方によっては「保守的」だったり「頭が硬い」とも言えるかもしれません。

パーキンソン病では、報酬系にはたらくドーパミンを出しやすくするために、この馴染みや習慣は「予定通りの快楽」として欠かせないと感じています。患者さんが馴染みのクリニックへリハビリテーションに通い続けるという習慣は、安心感や自信を持たせてくれるはずです。

彼女とお話しをしていると、新しいものへの興味やトライも大切なことだと改めて感じます。これは病気をお持ちの方、健康な方に関わらず、日々を豊かに過ごすために心がけたいものです。
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩