パーキンソン病2026.05.30
クリニックに通院されているパーキンソン病患者さん。50歳代の彼がクリニックへ通院してから、5年ほど経ちました。会社で重役を任されながら、家庭の大黒柱として持ち前の好奇心・エネルギーで日々仕事に励んでおられます。
その彼は、ここ数年でパーキンソン病治療薬に日内変動、ウェアリング・オフがみられるようになってきました。いわゆるオンとオフが目立ってしまう状態です。頼みの綱ともいえるレボドパの薬効が2-3時間まで短くなってしまうため、レボドパを1日に5回ほど内服することで、なるべくONの時間を増やすように工夫しています。それでもこの1年ほどは、とくに午後になると身体と頭が疲労しやすくなって、パフォーマンスが低下したり、集中力がなかなか続かないことが増えてきています。
「定年までのあと数年は、パフォーマンスを最大限に保った状態で仕事と生活を続けていきたい。」その希望に添って、パーキンソン病の外科手術である、脳深部刺激療法(DBS)を検討することになりました。先日、大学病院で2週間の検査入院を終え、DBSの適応があると判断されたことを、退院直後にクリニックまで伝えにきて下さいました。
クリニックで改めて伺いますと、彼はDBSでパフォーマンスが良くなるのであれば、手術に前向きの様子です。気になる点は、DBSの手術入院に2ヶ月ほどの入院が必要になる点、そして半年後と1年後にそれぞれ2週間の評価入院が必要になるという点です。治療に一定の理解がある職場ですが、「入院期間中の給与保証をどうしていくか?」ということを、色々なパターンを想定しては悩んでおられました。
彼の悩んでいる点を詳しく伺っていきますと、今年度は有給休暇が55日ほど利用可能とのことです。まずは秋の2ヶ月入院を有給休暇扱いで対応し、半年後の入院を翌年度の4月にすることで、有給休暇が加算された状態で入院をするというプランです。これですと、入院期間を有給休暇でカバーすることはできそうですが、通院に必要な分の有給休暇まできちんと確保できるか、万一インフルエンザなど他の病気に罹ったときに有給休暇が残っているか…あれこれ考えていくと「有給休暇のみで、入院・外来通院・そのほかの休みをすべてカバーできる」とも言い切れない状態です。
一方で、病気で就労が出来ない場合は、会社員の方ですと、健康保険組合から傷病手当金を受給することが可能です。支給額は給与の3分の2程度に抑えられますが、合計1年6ヶ月分の傷病手当金を受給することができます。彼の「入院・外来通院」のタイミングで都度傷病手当金を受給していくことも可能です。ひとつ悩みは、100%保証される有給休暇に比べて、傷病手当金の受給額は3分の2と下がってしまう点です。
いざDBSをすることが決まっても、治療スケジュールと仕事・給与にどうやって折り合いをつけていくか、とても大切で難しい問題です。クリニックの診察室では、彼と、ソーシャルワーカー(社会福祉士)と私の3人で、様々なパターンでシミュレーションする時間が続きました。この日は結論まで出ませんでしたが、とても大切なことですので、これから手術までの時間に、納得できる方針が固まるようアドバイスをさせていただく予定です。そして、DBSを受けて、晴れて最大限のパフォーマンスが発揮できることを期待しています。
なお、現在の彼は厚生障害年金(3級)をすでに受給していて、万一65歳までの間に仕事の継続が難しくなった場合には、障害年金2級への変更も選択肢になることもお伝えしています。
受ける治療によっては有給休暇で対応できたり、傷病手当金の申請が必要になったり、障害年金の申請が望ましいケースも想定されます。これは患者さんの年齢や症状、治療スケジュール、会社員か自営業かによっても変わってきますので、個別にソーシャルワーカー(社会福祉士)が中心となってベストな社会保障制度を提案できるように関わっています。
こういった社会保障制度を利用するためには、患者さんご自身から手続きをしないといけなく、どれが自分に必要で合っているのかを判断するのはとても難しいことではないでしょうか。クリニックの診察室では、社会保障制度を日頃から意識して診療を行っています。気になることがありましたらソーシャルワーカー(社会福祉士)にお気軽にお声がけください。
~満開のシラネアオイ・伊達紋別岳


廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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