Dr Makoto’s BLOG

蛇口をひねっても

パーキンソン病2018.07.19

ようやく北海道の夏らしい暖かさとなってきました。
ちらほらオープンし始めたビアガーデンをみて、短い夏をめいいっぱい楽しみたいと思うところです。

パーキンソン病で減少する脳内ドーパミン。
これまで治療の基本「ドーパミンをいかにして増やすか」、ということをお伝えしてきました。薬物治療、生活の工夫、リハビリテーション、どれもドーパミンを増やすために大切なことです。

一方で、パーキンソン病の症状に目を向けてみますと、振戦(ふるえ)・筋固縮(筋肉の硬さ)・動作緩慢(動きにくさ)、これらの根底には「筋肉の硬さ」が影響しています。パーキンソン病は「力を抜くことが上手くできない病気」と私は考えていますが、つまりは日頃から力が必要以上に入ってしまうため、筋肉が硬くなってしまい、やがて前述のような症状を呈するようになってしまいます。

それでは、ドーパミンを増やせばこれらの症状(振戦・筋固縮・動作緩慢)はすっかりよくなるのでしょうか?想像してみますと、ドーパミンを増やすことですっかり良くなりそうにも思えますが、実際は薬物治療のみで筋肉の硬さを十分にとることは難しい印象を持っています。なぜなら、(ドーパミンが減少することで筋肉の緊張が高まることは確かですが)慢性的に筋肉が硬くなってしまうと、ドーパミンとは直接関係が低い、筋肉が硬い状態にとどまる「拘縮」を起こしたり、筋肉が縮んでしまう「萎縮」を起こしてしまうためです。

このように、薬物治療でドーパミンを補充すると確かに脳内ドーパミンは増えますが、それで筋肉の硬さを十分にとれるかというのは別の問題があるように思います。

すこしイメージしてみましょう。水道の蛇口をめいいっぱいに開けて水を出しても、水が出る口を手で塞いでしまえば、せっかくの水も出てくることが難しいですよね。ドーパミンをめいいっぱいに増やしても、肝心の筋肉が硬いままでは、症状が良くなったという実感・効果を感じにくい。もちろんドーパミンを増やすことは筋肉の硬さを和らげることに一定の効果がありますが、リハビリテーションやストレッチで物理的に筋肉の硬さをとっていくことは、薬物治療の効果を最大限とするのに不可欠なことです。

水道の蛇口をめいいっぱいに開け、そして水の出る口も広く開けていくことで、はじめて水がしっかり出るようになる。そんなイメージを持ちながら、日頃からパーキンソン病の患者さんに接しています。 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩