パーキンソン病2026.07.26
パーキンソン病患者さんで減少する脳内ドーパミン。健康な方でも、年齢を重ねるにつれてドーパミン神経は減少していくものですが、パーキンソン病患者さんではその減少の度合いが強くなってしまうために、パーキンソン症状が出てしまうと考えられています。
パーキンソン病の診断に大切な検査のひとつである「ドーパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)」。DATスキャンでは具体的な数値(SBR;Specific Binding ratio)でドーパミン神経が測定され、低下している場合には正常範囲と比較してどれくらい低下しているかが分かります。ある意味、「ドーパミン年齢」がわかる検査で、たとえば50歳で来院されたパーキンソン病患者さんのドーパミン神経の数値が、健康な方でいうところの90歳くらいのドーパミン神経ということもあります。
今やパーキンソン病の診断に広く実施されているDATスキャン。このDATスキャンが保険適応になったのは2013年のことです。それまでは左右差のある振戦・固縮・動作緩慢などといった診察所見からパーキンソン病を疑い、レボドパなどの薬剤でドーパミンを補充していき、症状の改善が確認されることでパーキンソン病と診断されてきました。これは今も変わらないパーキンソン病診断の王道ですが、典型的ではないパーキンソン症状(具体的には左右差が乏しい振戦・固縮・動作緩慢症状)の場合や、薬剤の反応がはっきりしない場合には診断に苦慮することが多かったものです。そのような時代に、DATスキャンが登場したときには、夢のような・革命的な診断ツールに、私も心底驚いたのを覚えています。
それでは、現在はパーキンソン病が疑われる患者さんすべてにDATスキャンを実施しているのでしょうか?クリニックを受診された患者さんにパーキンソン病が疑われたとき、個人的にDATスキャンを実施している患者さんは7割程度です。残り3割程度の患者さんはDATスキャンを実施せずに、レボドパによって症状の改善が確認されることで、パーキンソン病と診断して治療を続けています。
パーキンソン病が疑われるすべての患者さんにDATスキャンを実施するほうが診断の精度が高くなるのは言うまでもありませんが、あえてDATスキャンを実施しない場合もあるのです。それは、所見からパーキンソン病の可能性が極めて高いと考えられる患者さんや、初診の時点でパーキンソン症状が強い患者さんの場合です。つまり、左右のどちらか一側に安静時振戦が目立つ患者さんは、パーキンソン病の可能性が高いことが昔から知られていますので、あえてDATスキャンまで実施しないことがあります。また、パーキンソン症状が強い場合には、まず症状を良くすることを優先して、DATスキャンの結果を待たずに治療を先行することがあります。そのほかにも、DATスキャンにかかる費用が高額(3割負担で自己負担が約27,000円)ということもありますし、遠方の患者さんなどで時間的な制限があるときにも、あえてDATスキャンまで実施しないことがあります。
逆にDATスキャンを積極的に実施するのはどんな場合でしょう?そのような患者さんにはいくつかの特徴があります。とくに、固縮や(前傾姿勢や側弯を伴う)姿勢変化が目立つ患者さんは、診断的にレボドパを試しても、(固縮が軽減するのには一定の時間を要するので)レボドパの効果を短期間で評価しにくいため、DATスキャンでドーパミントランスポーターをしっかり測定するようにしています。
最終的にDATスキャンを実施するかどうかは、パーキンソン症状の程度や患者さんの希望などを考慮して、都度相談しながら決めるようにしています。40代から50代の若い患者さんはDATスキャンを希望される方が多い印象です。また、日常生活への影響が比較的小さい患者さんは、まず治療反応性を一緒にみていき、治療効果が乏しいと感じられるときにDATスキャンの追加を希望される方もいます。
DATスキャンは、パーキンソン病が疑われる患者さんへ、保険診療では原則一度のみ実施できる検査です。パーキンソン病診断に有用な検査であることはもちろんのこと、どのタイミングで検査をするか、どうやって治療に活かしていくか…少し先を見越しながら大切にしていきたい検査のひとつです。
~北穂高岳からみる大キレットと槍ヶ岳


廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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