Dr Makoto’s BLOG

時間を経て感じられる安心感 ~ベテラン患者さんからの言葉

パーキンソン病2021.11.14

季節の変わり目のせいでしょうか、すっきりしない天気が続いています。
診察にいらした患者さんの次回予約が年明けになる方もちらほらと…いやぁ、あっという間に今年の終わりが見えてきて、なんだかゾクッとしてしまいます(笑)。
 
パーキンソン病と分かってから、クリニックに通院しておられる患者さん。この11月にクリニックが開院5年を迎え、ながい患者さんですと5年ほど経ちました。パーキンソン病の診断を受けた当初、多くの患者さんが「今後どのように病気がすすんでいくのだろう」という不安を感じておられます。本やインターネット上で度々記載されている「パーキンソン病の進行には個人差がある」という文言…「個人差」という言葉が、とくに診断ついてまもない患者さんには、やむなく不安を感じさせてしまうようです。
 
診断がついて最初の3か月から半年にかけては、一般的なパーキンソン病の話はもちろん、脳からドーパミンを上手く出すための生活ポイント、薬の内服の仕方、生活リズムをしっかり一定にすること、ストレッチやリハビリテーションの大切さ、仕事や家事との付き合い方…などなど、色々な方向からアドバイスをするように心がけています。そのような情報や知識が、患者さんの不安を少しでも和らげるのに大切であることは言うまでもありませんが、実は「一緒に今後の症状推移をみていって、振り返っていく」ことがいちばん大切と感じています。
 
正直なところ、診断がついて間もない患者さんの進行具合は、1-2回の診察のみでは私も予測つかないことが多いのです。受診までのいきさつで、例えば、「5年前から少しずつふるえが目立ってきた」患者さんは進行が緩やかという予測はつきますが、実際には私も一緒に経過をみていかないとわからないのが正直なところです。
 
私がよくお伝えすることのひとつに、「パーキンソン病は骨折や肺炎などの怪我・合併症がなければ、急に進行することはありません。まずは治療しながら一緒にこれから3か月の体調をみていきましょう。3か月後の体調が今とさほど変わりなければ、さらにその3か月後(今から半年後)も体調さほど変わりないと予測できます。その積み重ねで、時間を経ていくと、1年後、2年後の体調をある程度予測できるようになると思います。」
 
先日、クリニックに通って2年になるパーキンソン病患者さんと、診断がついてからの2年間を振り返っていたときのことです。患者さんは「最初は進行具合がどんな感じか分からずに、不安で仕方なかったですが、実際に2年が経って、こうやって体調がまずまず安定していると分かったことが、いちばんの安心材料です。私も少しベテラン患者になったんでしょうかね」と微笑んでいました。
 

 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩