Dr Makoto’s BLOG

Q and A 「ボトックス®」

クリニック紹介2016.12.21

今回も多くのご相談があるボトックスについて紹介します。

Qボトックス注射はどういう治療ですか?
ボトックスは、ボツリヌス菌が作り出すA型ボツリヌス毒素を精製した薬剤で、筋肉を弛緩させる(ゆるませる)
効果があります。ボツリヌス菌は「いずし」による食中毒を起こす筋ですが、ボトックスを注射したからといって、
ボツリヌス菌が体内に入ることはなく、食中毒をおこす心配もありません。

Qどのような患者さんがボトックス注射を受けることができますか?
ボトックスは筋肉を弛緩させることにより、筋肉の緊張や痙攣を改善させる効果があります。
現在、ボトックスは以下の疾患で保険適応があります。

✓眼瞼痙攣        眼のまわりがピクピクする、目が開きにくい
✓片側顔面痙攣        眼のまわりと頬、口がピクピクする、突っ張る
✓痙性斜頚        首が捻じれてしまう、上(下)を向いてしまう
✓上肢痙縮        手が突っ張る
✓下肢痙縮        脚が突っ張る
✓小児麻痺による尖足 かかとをつけることができない
✓重度の腋窩多汗症 
✓斜視
美容形成の分野で「シワ取り」に使用されるボトックスは保険適応がありません(自費診療)。
当クリニックでは眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頚の一部、上肢痙縮、下肢痙縮、小児麻痺による尖足に対し
ボトックス治療をしています。

Q.どのようにボトックスを注射しますか?
ボトックスは注射する筋肉の大きさなどによって、投与する量を調整します。
手足のような大きな筋肉へは投与量を多めに設定し、眼周囲のような小さな筋肉へは投与量を少なめに設定します。
眼の周囲であれば片眼につき、上瞼と下瞼へ3か所ずつ(合計6か所)、細い針で注射します。
局所麻酔をすることはできないのですが、針は非常に細いもの(27ゲージという太さ)を使用することで、
痛みを最小限に抑えるようにしています。
注射に要する時間は、注射部位にもよりますが、5-10分程度で終了します。

Q.ボトックスは注射後どれくらいで効いてきて、どれくらいの間効果が持続しますか?
適切に効けば、はやくて2-3日、おそくても2週には「ピクピクしなくなった」「突っ張りが楽になってきた」
と効果を実感できます。持続期間は平均3か月で、効果がなくなってくると痙攣や突っ張りが出てきますので、
「ボトックスが切れてくる」のがわかるようになります。
従いまして、ボトックスをずっと効いた状態にしようとすると、だいたい3か月に一度の頻度で、繰り返し注射する
必要があります。ただ、ボトックスは3か月ごとに必ず注射する必要はなく、3か月に一度注射している方もいれば、
年に一度のみ注射してる方もいます。

Q.ボトックスの副作用にはどんなものがありますか?
副作用にはいくつかありますが、一番問題となるのはボトックスの効きすぎによる「過度の筋弛緩」です。
 ✓小さな筋肉である眼周囲の筋へボトックスを注射し、効き過ぎててしまうと、瞼が下がってしまったり、
  眼をしっかり閉じられなくなることがあります。
 ✓頬や口角付近の筋へボトックスを注射し、効き過ぎてしまうと、笑った時に口角が下がったり、
      口角から水が漏れてしまうことがあります。
ボトックスの投与量は筋肉の大きさによって推奨される投与量が決まっていますが、効果には個人差もありますので、
同じ量のボトックスを打っても、適切に効く方もいれば、効きすぎて瞼がさがってしまう方もいるのが事実です。
当クリニックでは初回に標準量よりも少なめのボトックスを投与することで、過度の筋弛緩を避けるようにしています。
この初回投与量の設定は、経験がものを言うところです。
1回目は「効きすぎを防ぐため安全に注射する」ことが一番の目的です。
初回の注射で万一効き過ぎて瞼が下がってしまったら、2回目の注射は怖くてできないと思うのが当然です。
効果の微調整は、2回目以降に量の変更をしていくことでしっかり行うことができます。

Q.ボトックスの注射は費用が高いと聞きましたが?
ボトックスの注射ボトルには50単位と100単位の2種類があり、それぞれ47,154円、84,241円と国が定めた薬価で決まっています。このほかに注射の手技料が保険診療で4,000円(10割)と決まっています。
たとえば、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣の多くは50単位ボトル1本で足りますので、1回のボトックスにかかる代金は47,154円+4,000円(手技料)=51,154円となります。患者さんの負担割合にもよりますが、3割負担ですと約15,300円となります。
なお、患者さんおひとりにつきボトル1本をその日で使用するという決まりがありますので、10単位注射しても、35単位注射しても、料金は50単位ボトル1本分で同額です。
痙性斜頚や上肢痙縮・下肢痙縮は症状にもよりますが、50単位から200単位の間で注射をすることが多いです。たとえば、脳梗塞後の左上肢痙縮・左下肢痙縮に150単位を注射した場合は、47,154円(50単位)+84,241円(100単位)+4,000円(手技料)=135,395円となります。患者さんの負担割合にもよりますが、3割負担ですと約40,600円となります。

Q.ボトックスのメリット・デメリットはどんなところですか?
メリット 
 ✓注射する筋肉に狙って効果を出すことができる
 ✓症状の強さに応じて量の調整がしやすい
デメリット
 ✓数か月で効果が切れてしまう
 ✓内服と比較して価格が高い

Q.ボトックスの予約方法を聞きたいのですが?
はじめてボトックスを受ける方には、一通りの診察を行ったあと、ボトックスの治療効果・副作用・値段などを説明します。
希望される方は同意書にサインを頂いたうえ、その当日にボトックス注射をすることが可能です(注射量が多い場合は後日行うこともあります)。
注射1か月後に受診のうえ、効果や副作用が出ていないかを診察します。
 ✓効果不十分の場合は、この時点でボトックスを追加することが可能です。
 ✓効果がしっかり出ている場合は、順調ですのでそのまま経過を追っていきます。
3か月ほど経過して薬が切れてきたと感じましたら、注射希望日の1週間前までに電話でボトックス注射の予約をおとりください。当日診察のうえ、注射を行っていきます。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩