Dr Makoto’s BLOG

脳の底力を鍛えよう ~ドーパミン治療と運動習慣・リハビリテー...

パーキンソン病2026.02.23

パーキンソン病の診断をするときには、これまでの経過を詳しく聞くことからはじまり、筋肉の固縮・手足の振戦・動作緩慢・バランス機能といった神経診察をあわせて、総合的に診断していきます。これは今でも変わらない診療の基本でありますが、ここ10年は脳内のドーパミン神経終末を定量的に測定する「DATスキャン」の登場によって、さらにはやい段階に正確な診断ができるようになりました。
 
DATスキャンは、ドーパミントランスポーターシンチグラフィと呼ばれる検査です。ダットスキャン®という薬剤を注射し、薬剤が脳に届く3時間後にSPECTという機械で撮影することで、脳内のドーパミン神経終末を測定するものです。このドーパミン神経終末はSBR(Specific Binding Ratio)という具体的な数値で表され、性別や年齢によって幅がありますが、健康な方ではおおよそ5から10に収まります。ところが、パーキンソン病患者さんではSBRが正常範囲を下回ることから、ここ10年は多くのパーキンソン病患者さんの診断に用いられています。
 
クリニックに初めて来られるパーキンソン病患者さんへ、このDATスキャンをしてきて感じることが、SBRとパーキンソン病の重症度は必ずしも関連しないということです。つまり、SBRが低いからといってパーキンソン病症状が強いとは限らないのです。これは、ドーパミン神経終末の低下(SBRの低下)のほかにも、パーキンソン病の発症や経過に影響する因子があると想像させます。
 
予てから、パーキンソン病の発症や経過に影響する因子のひとつに「運動予備能」が注目されていました。脳内の複雑な神経ネットワークを柔軟に動員し、ドーパミン神経機能の低下を補う力のことで、いわば、病気に向き合う際に発揮される「脳の底力」と言えるものです。この運動予備能を鍛えることができれば、パーキンソン病の発症や進行予防にきっと役立つ、多くの臨床医や研究者が考えてきました。
 
最近になって、この運動予備能の維持・向上には「適切なドーパミン補充療法」と「日常的な運動習慣」が極めて重要であることが報告されました(Tukita K, et al. Neurology 2026.)。予てからパーキンソン病の治療には「ドーパミン治療とリハビリテーションが両輪」と言われてきましたが、これを強く後押しする報告です。とくに、発症の早い時期に運動予備能を高く保つことが、長期的な進行リスクを大幅に減らすことも示しています。
 
「パーキンソン病の早期から、薬剤治療に加えて運動習慣・リハビリテーションを取り入れることで、脳の底力を鍛えていき、進行を予防する。」多くの患者さんやご家族にとって心強い研究成果になると感じています。
 

~短い夏の利尻山

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩

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