パーキンソン病2026.09.27
シルバーウィークを終え、朝晩がだいぶ肌寒くなっています。今年の大雪山の紅葉は、数年に一度の見事な紅葉を楽しむことができました。これから季節は一気に進んでいくのでしょうか。
先日クリニックにいらしたパーキンソン病患者さん。働き盛りの世代で、会社では重責を担い、家庭でも家族を支える多忙な日々を過ごしておられます。彼と話をしていますと、冷静な話し方のなかにも、仕事や家庭への熱い思いを随所に感じます。加えて、趣味のトレイルランニングを楽しんでいる話からも、とてもエネルギッシュで自己管理に長けている印象を受けました。私と同世代ということもあるのでしょうか、彼の話のひとつひとつが、ずしんと胸に響いてきます。
彼がクリニックを受診されたきっかけは、1年ほど前から、運動や歩いているときに右脚が重くなる違和感を覚えるようになったためでした。最初のうちは疲労や腰の影響かと思っておられたようですが、時間が経っても症状が続いていくため、ご自分で症状を調べて、パーキンソン病の可能性を疑い、クリニックを受診されました。
はじめての診察室では、とても人当たりのよい第一印象で、私たちスタッフにも気を配りながら、丁寧に、わかりやすくこれまでの経過を伝えて下さいます。拝見すると、姿勢は保たれていて、歩行のスピードはスムーズ、発話もはっきりとした明瞭さです。右の手脚にわずかな筋肉のこわばり(固縮)があり、歩行の様子を詳しくみていくと、わずかに右脚の上りが左脚とくらべて小さくなっています。右足関節の可動性がやや狭くなっていて、どうしても歩行のときにつま先が下がる傾向にあるようです。安静時や動作時にふるえ(振戦)はなく、体幹のバランスもしっかり保たれています。
パーキンソン病の診断目的にDATスキャン(ドーパミントランスポーターSPECT)を実施したところ、わずかにドーパミン神経終末の値(SBR)が低下しています。右側の筋固縮が主体の、ホーエン=ヤール分類1度のパーキンソン病が考えられることをお伝えしました。ご自分では右脚の違和感が続いているものの、仕事や日常生活、運動まで一通りこなせていることから、周囲の方からはなかなか気づかれにくい状態のようでした。DATスキャンでの客観的なドーパミン神経終末の低下(SBR)を供覧すると、御本人もご家族も診断がついたことへの複雑な気持ち、そして、これからどうやって過ごしていくかという不安がひしひしと伝わってきます。
それでも診察室では、動揺をあまり感じさせないような、気丈な受け答えをされていたのが印象的でした。定年まではしっかりと仕事を勤め上げ、パーキンソン病へ良いと思われることは全部取り入れていきたいと、彼の力強い言葉に、私も救われた気がしています。幸いパーキンソン病初期の段階で治療を開始することができますので、当面はMAO-B阻害薬主体の薬剤治療を続け、月1回の来院時にリハビリテーションも開始することとしました。
彼の素晴らしい点は、基礎体力があり、自己管理にも長けている方と見受けられることです。そのため、やみくもに薬剤に頼らず、リハビリテーションでパーキンソン症状のある身体を上手に使うための指導や、食事や睡眠などの生活サイクルを安定させる生活指導で十分に対応できると感じています。「パーキンソン病と診断されるまでに、どれくらい日常的な運動習慣・基礎体力があったか」、これはパーキンソン病治療に重要な要素とされています。また、ご自身の体調を適切に把握しながら、目的を持って体調・生活管理をしていくという「自己管理能力」も、パーキンソン病治療に同じくらい重要な要素です。
これからの定期診察では、身体の状態を拝見するのはもちろんのこと、彼の場合は、頑張り過ぎてオーバーワーク・過活動で疲労が溜まっていないか、また職場での就労状況なども伺いながら、ベストな体調にもっていくようスタッフ一同で関わって参ります。
~大雪山・沼ノ原の紅葉


廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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