Dr Makoto’s BLOG

期待からプラスアルファの効果へ ~プラセボ効果も望むところ

パーキンソン病2021.08.22

1日の気温差が大きくなり、毎日着る服装にも気を遣うようになってきました。
秋が着実に近づいてきているのを感じますね。
 
プラセボ効果というのをご存知でしょうか?
本来の薬理学的には効果が期待できない、いわゆる「偽薬」でも、なんらかの効果が出ることをプラセボ効果と呼んでいます。
例えるなら、小さじ1杯の小麦粉を「睡眠導入剤ですよ」と伝えられて、いざ内服すると眠くなってくること…この場合、小麦粉は睡眠導入剤の効果は期待できない「偽薬」ですが、「眠れる」という暗示のようなものを受けて、実際に効果が出てくるというプラセボ効果です。
 
現在使われているほとんどの治療薬は、臨床試験を通じて薬の効果が確かめられたものです。それら治療薬の多くが、プラセボ(偽薬)を比較対象として、薬理的な効果が確認されているのですが、実はプラセボ(偽薬)であっても一部の方に効果が出ていることが以前から知られていました。
とくにパーキンソン病治療薬の臨床試験では、他の治療薬と比べてもプラセボ効果が高く、プラセボ(偽薬)であってもパーキンソン症状が良くなる傾向が高いと言われています。
 
どうしてプラセボ(偽薬)でもパーキンソン症状が良くなることがあるのでしょうか?
その理由として、暗示にかかるという気分的な問題だけではなく、脳の機能そのものが変化することで、プラセボ効果が得られると考えられるようになってきています。
 
プラセボ効果に影響する要素はいくつもあるのですが、そのひとつに「期待」があります。期待を持ちながらプラセボ(偽薬)を内服すると、脳の報酬系というネットワークが刺激されやすくなります。その結果、脳の線条体へ向けてドーパミンが分泌されやすくなるため、プラセボ(偽薬)であってもパーキンソン症状が良くなると考えられています。
 
実際のパーキンソン病治療現場では、もちろん効果が確認された治療薬を処方します。患者さんが治療薬を内服することで、おもにドーパミン分泌といった治療薬による効果が出てきます。興味深いことは、同じ治療薬でも、「良くなる」「動けるようになる」「気分が元気になる」といった期待を持って内服することで、プラセボ効果のようにプラスアルファのドーパミン分泌効果があり得るということです。
パーキンソン症状が良くなれば、プラスアルファのプラセボ効果も望むところ、ですね。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩