Dr Makoto’s BLOG

熱い夏と眠気 ~睡眠障害と覚醒障害

パーキンソン病2025.08.03

今年は「熱い夏」を迎えています。気温もさることながら、ファイターズがなんとも強くて、シビれる試合が続いているのです。スタッフや患者さんとはファイターズの試合に一喜一憂している毎日。今年の夏はいつもと違うぞ?…まさに、熱い夏を迎えています。
 
パーキンソン病患者さんからご相談いただくことが多い症状に、「日中の眠気」があります。「日中ずっと眠気がある」、「薬の内服や食事のあとに急に眠くなる」、「さっきまで何ともなかったのに急に眠気に襲われて寝落ちしてしまう」。一言で眠気と言っても、様々な眠気の出方があるようです。
 
眠気の原因は、夜に眠れない「睡眠障害」と、日中に起きていられない「覚醒障害」によるとされています。
 
「睡眠障害」は、寝つきが悪い(入眠困難)や、途中で目が覚めてしまう(中途覚醒)影響で、夜間の睡眠をしっかりとれなくなってしまい、日中眠気を感じるようになることが多いようです。健康な方でも、年齢を重ねると入眠困難や中途覚醒は増えていくものですが、とくにパーキンソン病患者さんは眠りが浅くなってしまい、睡眠障害が出やすいと言われています。また、パーキンソン病の症状によって、寝返りが難しいために中途覚醒してしまったり、中途覚醒したときにふるえが気になって再び眠りにつくことができない、という患者さんの声も伺います。
 
眠りが浅くなっている患者さんへ、少量の睡眠導入剤を使用することも一つの方法です。一方で、寝返りのしにくさ・ふるえといったパーキンソン病症状が睡眠へ影響している場合には、夜間帯にもドパミン濃度を保つ効果があるドパミンアゴニストを使用することは効果的です。多くの患者さんが内服しているレボドパですが、その薬効はせいぜい5-6時間に限られてしまうため、どうしても夜間帯はドパミン濃度が下がってしまい、寝返りのしにくさやふるえが出やすい傾向にあるためです。
 
ところで「覚醒障害」は、夜間に睡眠をとれていても日中に眠気を感じてしまう症状です。健康な方でも、食事のあとは胃腸に血流が流れていき、眠気を感じるようになります。パーキンソン病患者さんは、この傾向が顕著となってしまい、食後の強い眠気に襲われる方が多いようです。加えて、食後に内服するレボドパも眠気を伴うことがあるため、「食事とレボドパ」によって、さらに眠気が強くなってしまいます。このような場合は、レボドパの1回量を減らす、一度に摂取する食事量を減らして分食にする、といった方法が効果的です。
対応が難しいのが「さっきまで何ともなかったのに急に眠気に襲われて寝落ちしてしまう」場合で、仕事中にストンと居眠りしてしまう患者さんも拝見します。多くはドパミンアゴニスト(非麦角型)の副作用で出ることが多く、薬剤の調整を行っていきます。
 
このように、眠気を感じる場合には、まず満足する睡眠をとれているかを振り返ってみることをおすすめします。それでも眠気を感じる場合は、パーキンソン病の影響、使用している薬剤の影響、食事の影響などが考えられます。ひとつひとつの原因を紐解いていき、眠気が落ち着くように関わっています。
 
先日、クリニックに通院しているパーキンソン病患者さんから、「日中に急に襲われる眠気」の相談をいただきました。夜間の睡眠状況を伺ったところ、「睡眠障害」は比較的軽いようでしたので、「覚醒障害」が大きく影響していると考えられました。いざ、ドパミンアゴニストを減量していくのですが、期待していたほど眠気は改善しませんでした。ところが、レボドパの内服回数を一日3回から4回へ増やしたところ、眠気がほとんどなくなったと、スッキリした表情で話しておられました。多くはないのですが、ドパミン濃度が低下することでの覚醒障害というのも経験します。
 
眠気への対策はとっても難しいと、改めて感じているところです。
 

~双六台地から望む槍ヶ岳(天空の滑走路)

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩