Dr Makoto’s BLOG

電池切れをおこさないために ~ドーパミンの収入>支出

パーキンソン病2025.11.24

気温がだんだん下がっていくと、景色はすっきり見えるようになっていきます。蝦夷富士とも呼ばれる円錐の形をした羊蹄山ですが、眺める場所によって微妙に形が変わっていき、観ていても飽きることがありません。良く晴れたこの週末は、羊蹄山を観に車を走らせ、冬がやってくる前の最後を楽しむことができました。
 
パーキンソン病で減少する脳内ドーパミン。減少の程度は患者さんによって実に異なり、補充に十分な治療薬の量も患者さんによって変わってきます。パーキンソン病ではドーパミン神経細胞が減少することで、ドーパミンの基礎的な分泌が低下することが最大の原因です。それに加えて大切なことは、ドーパミンは24時間リアルタイムに増えたり・減ったりと変動するということです。
 
実は、このドーパミンが消費され減少するタイミングのひとつに、「疲労」があると考えています。これは身体を動かすことによる疲労もあれば、頭をつかったり・精神的な緊張による疲労もあります。
 
例えば、会議や作業で集中力をつかってしまうと、脳の疲労によってドーパミンが消費され減少してしまう。仕事をされている方は、疲労が溜まらないように仕事内容の見直しも選択肢ではありますが、十分なパフォーマンスを求めるとなると、その分ドーパミン補充に必要な治療薬を多めに設定する傾向になります。また、人前に出て話をしたり、人混みを歩くときにまわりに注意を払うといった、精神的な緊張も、脳の疲労によってドーパミンが消費され減少すると考えています。
 
ドーパミンの収入:治療薬と睡眠でドーパミンをしっかり貯える
ドーパミンの支出:疲労をうまく分散したり、最小限にとどめ、ドーパミンの電池切れを防ぐ
 
 「いつもと同じように内服をしているのに、今日はいつもと体調がちがう…。」そんなときには、「脳や身体の疲労によってドーパミンの消費が多くなっていなかっただろうか」と、一日を振り返ってみてはいかがでしょうか。こういうメカニズムをイメージして、睡眠時間、内服のタイミング、疲労具合を試行錯誤しながら調整していき、ドーパミンの電池切れを防ぐように心がけることが大切です。
 

~ニセコから眺める羊蹄山
 
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩