Dr Makoto’s BLOG

パーキンソン病と体重 ~イメージは霜降りのお肉

パーキンソン病2021.10.24

先週の診察室では、思わず「安定感」という言葉が出てきました。
 
ながくクリニックに通院されているパーキンソン病患者さん。
1年前の今ごろ、彼女はパーキンソン病の体調が優れなく、なかなか寝付けずに食事もあまり喉を通らなくなってしまいました。身体はやせ細ってしまい、だるさ・疲労感もだいぶ辛い様子でした。毎日のように息子さんや娘さんたちが訪問しては付き添い、クリニックへ頻繁に通院して、次第に体調が回復していきました。ここ半年ほどは体調が安定し、彼女もともとのはつらつとした明るい表情となり、食欲も十分回復しています。
 
診察室では多くの患者さんに体重計へ乗っていただき、体重を測定するようにしています。
先日彼女の体重を測定したところ、1年前より10㎏ほど増えていました。彼女とご家族もちょっと苦笑いでしたが、もりもり食べているとのことで、笑い飛ばす余裕もあるようでした。寝付くことができて、食事をしっかりとれて、身の回りのこともひとりで落ち着いてすることができる…当たりまえにも聞こえるようなことを、普通にできる有り難みを感じておられるようでした。
 
私もついつい嬉しくなって、思わず「身体に安定感が増しましたね」と伝えたところ、ニヤリとした表情の彼女とご家族。1年前は風が吹いたら倒れてしまいそうなほど痩せていたのに、今は多少の風ではびくともしない、どっしりとした安定感があります(褒め言葉です)。
 
パーキンソン病患者さんには、体重が減ってしまう方が多く、色々な要因があると言われています。不安を感じやすくなって食事量が減ったり、食事をとるスピードが遅くなって食事に疲れてしまうことが影響しているようです。また、胃や腸の消化管の動きが遅くなって栄養が吸収されにくくなったり、すぐに満腹感を感じやすくなることも関係しているようです。さらには、筋肉の硬さ(固縮)や不随意運動(ジスキネジア)が消費カロリーを増やすとも言われています。
 
体重が減ってしまうと、脂肪も減ることで筋肉が硬くなってしまいます。硬い筋肉は姿勢が前傾になりやすく、また、膝が屈曲して脚があがりにくくなったり、様々なところに影響します。患者さんへよく伝えていることのひとつ、「霜降りのお肉」のイメージ。体重が増えた方が脂肪もつきやすくなり、軟らかい筋肉になっていくのです。
 
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩