Dr Makoto’s BLOG

大切な仕事 ~リハビリスタッフによるHALの臨床研究論文

クリニック2023.05.22

新緑の季節を迎え、公園の景色が色鮮やかになってきました。
山歩きにも気持ち良い季節になってきましたが、虫さんたちもだいぶ活動をし始めているようです。虫よけスプレーと熊鈴が欠かせないグッズになっています。
 
クリニックと本院(北海道脳神経内科病院)で行っているロボットスーツ医療用HALによる治療。筋疾患や運動ニューロン疾患患者さんの歩行能力を改善する効果がある治療で、北祐会で導入してから約7年を迎えます。
 
クリニックでは現在も年に1-2回ほどHAL治療を継続している患者さんがおられます。クリニックへ週2-3回通いながら、ロボットスーツを装着して理学療法士のもと歩行訓練を行っていきます。合計9回の1クール治療を終えると、多くの患者さんで歩行距離が延びていき、歩行スピードも向上していきます。腰肢帯の筋力が安定する効果でしょうか、姿勢が良くなったという患者さんが予想以上に多い印象も持っています。
 
このHAL治療の効果は知られているところですが、果たしてHAL治療を年単位でながく繰り返すことで、どれくらいの効果を期待できるのでしょうか。北祐会でHALを導入してから約7年、私たちもその点に注目しながら、臨床研究としてデータを蓄積し、解析させていただいてきました。
 
現在クリニックで診療しているリハビリテーションスタッフが中心にまとめたHALの臨床研究論文が、先日、国際雑誌に採択されました。球脊髄性筋萎縮症という運動ニューロン疾患の患者さんへHAL治療を5年間継続したところ、2分間の歩行距離などをふくめた歩行耐久性が向上し、日常の活動を向上させるのに有効と報告しています。
 
日常診療の傍らで、このような臨床研究をすすめていくことに頭が下がる思いです。とても素晴らしい、大切な仕事です。このような報告を受けて、HAL治療がさらに広がって、患者さんの希望が広がることを期待しています。

Iijima K, et al. Frontiers in Neurology 2023 (in press) .
Long-term Effects of the Gait Treatment Using a Wearable Cyborg Hybrid Assistive Limb in a Patient with Spinal and Bulbar Muscular Atrophy: A Case Report with 5 Years of Follow-Up. 
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩