Dr Makoto’s BLOG

わくわくリハビリテーション ~リハビリとモチベーション

パーキンソン病2025.08.19

「頑張らないで、楽しくできるリハビリ」先日開催された講演会で、(当法人)北祐会のリハビリテーションを紹介したときの、リハビリテーション部長のワンフレーズです。
 
クリニックにもたくさんのパーキンソン病患者さんが、リハビリテーションに励んでおられます。
パーキンソン病患者さんにみられる、動作がゆっくりになってしまう症状。本来筋肉は、力を緩める・力を入れる動作を分けて行っていますが、パーキンソン病患者さんは、力を緩めることができず、過剰に力が入ってしまいます。そのため、パフォーマンスを発揮するのにどうしても時間がかかり、動作がゆっくりになってしまうのです。この筋肉に力が入った状態がながく続くと、ちょっとしたことで疲れやすく、動作を続けるのがだんだん辛くなっていきます。運動範囲が狭くなった関節や体幹では、十分な運動がむずかしく、運動効果が上がりにくくなってしまいます。これが、パーキンソン病の大きな特徴と考えています。
 
多くのパーキンソン病患者さんは、「自宅で時間をつくって運動やリハビリ頑張るんだよ」と、心配する家族からしばしば言われているのではないでしょうか。そして、日課のように身体を捻る体操をしたり、手や肘の関節をストレッチしたり、ウォーキングも取り入れて、黙々とリハビリに励んでいるたくさんの患者さんにお会いします。
 
そんなときに、医療者からもしばしば言われる「リハビリ頑張ってね」というフレーズ。「(病気の影響で運動効果が上がりにくいなか)毎日これだけ頑張っているのに、何をどうしたら良いんだろう?」と、せっかく高かったモチベーションが続かなくなる患者さんも拝見します。患者さんのそういった変化は、心配するご家族や医療者のモチベーションにも影響するようで、自戒を込めて講演を聞いていました。
 
ドーパミンは気分が良くなったときに分泌されていく脳内ホルモンです。ご家族や医療者は、普段から頑張ってリハビリテーションに励んでいる患者さんへ、まずは「よく頑張っていますね」と労いの言葉から始めたいものです。この一言があるだけで、患者さんの気持ちが和らぎ、きっとドーパミン分泌にも良い効果があるはずです。その次に、「リハビリ頑張ってね」だけで終わらずに、リハビリテーションの内容を「具体的に」伝えていくのが、パーキンソン病患者さんに関わる医療者の役割と感じています。
 
さて、冒頭の「頑張らないで、楽しくできるリハビリ」も、患者さんの気分が上がりやすくなり、ドーパミン分泌にも良い効果があるはずです。北祐会では「わくわくリハビリテーション」と称した活動をしています。カルチャースクールに通うかのように、太極拳・フラダンス・タンゴ・美術・音楽・指ヨガといったジャンルのなかから、好きなコースを選んで、いつものリハビリセラピストと楽しむ試みです。
 
ながく付き合うパーキンソン病だからこそ、できればリハビリテーションは、「頑張らないで、楽しくつづけたい。」それでも実際は、「毎日毎日ずっと頑張ってきている、(患者さん)自身の頑張りを少しわかって欲しい…」のが本心なのではないでしょうか。患者さんとご家族の気分が少しでも和らぐように関わっていきたいと、改めて感じています。
 
 
~北アルプス・鹿島槍ヶ岳と八峰キレット

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩