Dr Makoto’s BLOG

あっ、脚気の検査? ~黒いハンマーでポンっ

神経内科2017.09.20

最近は脚気(かっけ)という病気をあまり聞かなくなりましたがご存知でしょうか?
おもに肉や野菜に多く含まれているビタミンB1が不足することで、末梢神経の調子が悪くなり、下肢がしびれる病気です。
幸いにも、現代は栄養状態が良くなりましたので、ほとんど聞かれることはなくなりました。

クリニックに来られて、神経の診察をするときに、私たちはハンマー(打腱器)を用いて、
肘や手、膝関節付近の腱をポンっと叩いて反応を調べています。
黒いゴムのついた20㎝ほどのハンマーでポンっと叩くこの検査、
「何を診ているのですか?」と聞かれることもちらほら。
膝関節付近(正確には膝蓋腱と言います)をハンマーで調べるときには、
よくご年配の方から「あっ、脚気の検査?」と指摘されることもあります。

腱をポンっと叩くと、末梢神経が刺激を感知して、脊髄に刺激が達し、そして刺激が再び末梢神経を通って筋肉に達し、
最終的に筋肉が収縮します。この「末梢神経→脊髄→末梢神経→筋肉」というルートの調子をハンマーで診ているのです。

分かりやすく、とっても大雑把にいいますと、
◆「末梢神経や筋肉」の調子が悪いときは、刺激が上手く伝わらないので、腱をポンっと叩いても反応が出にくい(関節がビクっとならない)
◆「脳や脊髄」の調子が悪いときは、先ほどのルートが過敏になるので、腱をポンっと叩くと反応が出やすい(関節が過剰にビクっとする)
という現象を診ています。

つまり、この腱反射をみることで、
「脳や脊髄に原因があるのか」「末梢神経や筋肉に原因があるのか」を大きく把握できることができるのです。
脚気ではビタミンB1が不足することで末梢神経の調子が悪くなるので、
ハンマーで腱をポンっと叩いても反応が出にくくなっているのですね。

「手足がしびれるので脳梗塞を心配」される気持ちはごもっともですが、逆にこの反射が出にくいような場合には、
末梢神経などの原因であることが多く、脳が原因である可能性は下がってくるともいえます。

私たちは身体の出しているサインを読み取り、神経のどの部位で調子が悪いのかを判断しています。
診察のときに、ちょっとハンマーにも気にかけていただけると、ご自分の身体の調子がみえてくるかもしれませんよ。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩