Dr Makoto’s BLOG

リズムを補正する

パーキンソン病2018.04.28

本日クリニックにこられた患者さん。
信号ひとつ分くらいの距離を歩くと、足がとまらなくなってしまう、いわゆる「加速歩行」にながく困って受診されました。

パーキンソン病によくみられる症状のひとつにこの加速歩行があり、実際にパーキンソン病患者さんには加速歩行でお困りの方も多くおられます。ただ、この患者さんは加速歩行のほかに振戦や動作緩慢などの症状はほとんどなく、通常のパーキンソン病とは明らかに異なっていました。

パーキンソン病では「内的なリズム形成障害」が早期から出現すると言われており、このために左右の手や脚を均等にリズム正しく動かすことが難しくなると考えられています。これはパーキンソン病患者さんだけに限られた症状ではなく、たとえば前頭葉のはたらきが上手くいかないような患者さんにも出現するように思います。

このような患者さんがご自分でリズム一定に手脚を振って歩こうと試みても、そもそも内的なリズム形成障害があると、ご自分で一定にしているつもりでも、少しずつリズムが崩れて、結果として加速歩行になってしまいがちです。屋内での歩行程度であれば、リズムが崩れずに安定して歩けるものの、ある程度の距離を歩こうとすると次第にリズムが崩れていってしまいます。

リズムが崩れるまえに、歩行をストップして、リズムをまたゼロからリセットすることは加速歩行対策に大切です。また、最近はスマートフォンでメトロノームなどリズムを刻む音を聴きながら、そのテンポを刻んで歩くことで、リズムを一定に保てるようになり、歩行が安定する患者さんもおられます。

鏡をつかって視覚的にパーキンソン病の姿勢の歪みを補正したり、音刺激をつかってリズム形成障害を補正する。このような五感をもちいたトレーニング・意識も、薬や通常のリハビリテーションと別に大切なことだと感じています。

今朝、犬の散歩をしながら眺めた桜。
札幌はいよいよこの2-3日が見頃になりそうですね。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩