Dr Makoto’s BLOG

脇を締める ~ふるえを軽くするために

パーキンソン病2018.11.12

パーキンソン病患者さんに多くみられる手のふるえ。
一般的には「安静時振戦」と言って、とくに手をつかっていないとき、歩いているときなどに出やすいのですが、なかにはペンや箸を持ったり、コップを口に近づけるときにふるえが目立つような方も拝見します。

ふるえというのは、とくに力の入った・緊張した状態で出やすくなります。健康な方でも、たとえば「ギュッと握りこぶしをつくり、思いっきり力を入れてみる」と、手が細かくふるえるようになります。

それでは、どうしてパーキンソン病患者さんのなかには、ペンや箸を持ったり、コップを口に近づけるときにふるえが出やすくなる方がおられるのでしょうか?

パーキンソン病は「上手く力を抜くことが出来ない病気」と私は考えています。とくに肩甲骨周囲から首・肩にかけての筋肉の力を上手く抜くことが出来ずに、常に力の入った・緊張した状態となってしまいます。

この肩甲骨周囲から首・肩にかけての筋肉は、おもに腕を持ち上げるような動作ではたらきます。ペンをや箸を持ったり、コップを口に近づけるときには「肘を上げ、腕を持ち上げるような動作」をしますので、肩甲骨周囲から首・肩にかけての筋肉に力が入った・緊張した状態になっているパーキンソン病患者さんではふるえが出やすくなると考えています。

それでは、ふるえを軽くするためにはどうしたらよいのでしょうか?
そのためには、ふるえが出やすい動作の逆を行うと良いですので、「肘を上げ、腕を持ち上げるような動作」を少なくすることで、ふるえを軽くすることもできるのではないでしょうか。

「肘を上げ、腕を持ち上げるような動作を少なくする」ために。
具体的には「脇を締める」ことを意識するだけで、肩甲骨周囲から首・肩にかけての筋肉のはたらきを抑えることができ、手のふるえが軽くなります。

先日クリニックにこられたパーキンソン病患者さんの男性も、まさにこのことを話されていました。ビールを注ぐときに脇を締める、食べ物を口へ運ぶときに脇を締めて下から持ち上げるようにすると、ふるえが軽くなると伝えてくれました。

パーキンソン病のふるえは様々なメカニズムからなりますので、ふるえのある方みなさんに当てはまることではないのですが、「脇を締める」ことを、ひとつの方法として理解していただけると幸いです。 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩