Dr Makoto’s BLOG

茶色いダイヤ ~うんちとパーキンソン病の関係

パーキンソン病2020.08.23

34℃まで気温があがった水曜日、札幌ではうだるような暑さとなりました。
体調管理には大変な暑さではありますが、夏気分を味わえることは嬉しいものです。
 
先日の新聞夕刊一面に面白い記事が大きく書かれていました。
「『茶色いダイヤ』 便 秘められた可能性」

…腸内フローラという言葉を聞いたことがあるでしょうか?最近ではヨーグルトのCMでも耳にするようになりました。人の腸管には約1000種類、100兆個もの腸内細菌が生息しており、この群れは腸内フローラと呼ばれています。CMでは微生物をたくさんふくむヨーグルト(プロバイオティクス)で腸内フローラを変化させ、健康な身体をつくりましょうということを呼びかけています。
 
腸内フローラが注目されるようになったのはこの10年くらいになりますが、実際にどこまで病気の発症と関係があるのでしょうか?
 
最近のお子さんはアトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患を持つ子供が増えているようです。その原因のひとつに、パンやチーズといった「食生活の欧米化」が関係しているのでは?と言われてきました。食生活の欧米化で、日本人の腸内フローラが変化していることが、このような病気の発症に影響していると考えられるようになってきています。ちなみに、私が北大勤務時に研究していたテーマも、腸内フローラに関わる免疫と多発性硬化症の関係でした。
 
それでは、パーキンソン病と腸内フローラの関係はどうなのでしょうか?
パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドーパミン産生細胞にレビー小体と呼ばれるα-シヌクレインというタンパク質が蓄まることが原因のひとつと考えられています。パーキンソン病はこれまで「脳の病気」と考えられてきましたが、実はこのα-シヌクレイン凝集体は、腸管の神経叢から蓄まっていき、やがて中脳黒質まで広がるということが分かってきたため、パーキンソン病は腸などもふくめた「全身の病気」という見方が近年広まってきています。多くのパーキンソン病患者さんが悩む便秘…腸管にα-シヌクレインが蓄まる影響と考えると、なるほど合点がいきます。
 
最近の腸内フローラに関する研究では、パーキンソン病患者においてムチン分解菌であるAkkermansia が増えることによって、α-シヌクレインが腸管神経叢へ蓄まりやすくなり、パーキンソン病の発症や進行につながるのではと考えられています。(Mov Disord 2020 Jun 18)
 
健康な方の便を集めて人の腸内フローラをデータベース化し、病気の予防などに役立てようという動きが活発となってきているようですよ。まさに「茶色いダイヤ」ですね。
 
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩