Dr Makoto’s BLOG

レボドパを大切に育てよう

パーキンソン病2022.08.29

朝晩はだいぶ涼しくなってきました、、、夏の終わりを感じさせますね。
暖かい夏に体調がよかったパーキンソン病患者さんには、これから寒くなる季節を心配されている方もおられるようです。
 
パーキンソン病患者さんは、レボドパやドパミンアゴニストといった薬剤を使用して、脳内で分泌が減少しているドーパミンを補充していきます。薬の効いている時間帯は、レボドパは5-6時間くらい、ドパミンアゴニスト(徐放性)は24時間と、薬剤で特徴がありますので、両者を上手く使い分けていくことが大切になります。
 
レボドパは昔からある薬剤で、脳内でドーパミンへ変換されますので、いちばん高い効果があります。5-6時間ほどの薬効ですので、朝・昼・夕の1日3回内服することで朝から夜までドーパミンの濃度が安定していきます。問題になるのが、夜中から未明にかけての時間帯。夜中にトイレに行くときに動きに時間を要したり、起床時にベッドから起き上がるのが大変、というお話しを多く聞きます。夕食後に内服したレボドパは、5-6時間経過して、夜中から未明にかけては効果が下がってきてしまうためです。

一方で、ドパミンアゴニストの効果は、レボドパには敵いませんが、売りは24時間ドパミン濃度が安定しやすいということです。レボドパの効果が下がってしまう時間帯、つまり夜間から未明にかけてもドパミンアゴニストは効果が持続します。

多くの患者さんはレボドパとドパミンアゴニストのいずれか・あるいは両者を使用していることと思います。どちらもドーパミンを補充するのに欠かせない薬剤です。
 
ところで、薬剤の副作用に目をむけてみますと、レボドパを5年以上使用しますと、だんだんと薬効時間が短くなってきて、2-3時間で薬が切れてしまうという、いわゆる「ウェアリングオフ現象」が出てくると言われています。ドパミンアゴニストにウェアリングオフ現象はありませんが、眠気・(貼付剤ですと)皮膚のかゆみ・幻覚が出やすくなるとも言われています。

パーキンソン病の治療を開始してから1-3年の間は、レボドパもドパミンアゴニストも十分効いてくれる時期で、「ハネムーン期」とも言われます。5年ほど経った頃から、先述のウェアリングオフ現象が出てきて、レボドパ内服回数を1日4回5回に増やしたり、ドパミンアゴニストを増量して、ドーパミン濃度が保たれるように対応していきます。初期は少量だったドパミンアゴニストをこの時期に増やしていくと、幻覚が出やすい患者さんも拝見します。その他の補助剤(MAO阻害薬・COMT阻害剤・イストラデフィリン・アマンタジン・ゾニサミドなど)も併用して、とにかくドーパミン濃度が安定するように工夫していくのです。そして、10年ほど経った頃には、追加した薬剤が副作用などで減量や中止せざるをえないこともあり、最終的にはレボドパ治療に集約されていくようになります。
 
レボドパは昔も今も、パーキンソン病治療の基本ですが、内服できる量に上限もあります。パーキンソン病と診断を受けた初期から、とにかくレボドパを大切に大切に育てていくイメージで日々診療に当たっています。
 
薬のみに頼ってしまうと、脳は楽な方に行ってしまって、ご自分の脳からのドーパミン分泌をサボってしまいます。睡眠でドーパミン分泌を促す、ちょっとお尻をたたいて定期的な運動をする、便通を安定させる、疲労によってドーパミンが電気切れしないように休息をとる…どれもレボドパの効果を最大限に発揮させるために、毎日大切にしたい習慣です。

~東大雪 ニペソツ山と朝焼け

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩