Dr Makoto’s BLOG

じょうずな適当加減 ~家事とのかかわりかた

パーキンソン病2018.03.24

日常生活の大半を占める家事は切っても切れないものです。

「ドーパミンのバッテリーが小さくなり、すぐ電池切れしてしまう」パーキンソン病。
日常生活で動いているうちにドーパミンが消費され、動きがだんだん大変になっていく(=電池切れ)ことがしばしばみられます。パーキンソン病の治療薬やリハビリテーションはドーパミンを増やしますので、ドーパミンのバッテリーを大きくさせることで、動きやすくなったり、電池切れしにくいカラダになっていきます。

そこで大切になってくるのは、日常生活で動くエネルギー(=電池の消費)を上手くコントロールして、いかに電池切れしないようにするか、ということです。

ちょっと極端ではありますが、ランニングのような少し激しめの運動をしても、その後しっかり休息をとることで、トータルのドーパミン消費がバッテリー内に収まれば問題はないのです。
一方で、「省エネ型」とでも言いましょうか、激しめの運動・作業をせずに、自宅でゆっくり長時間家事を続けることで、ドーパミン消費をバッテリー内に収めることもできます。

「ドーパミンのバッテリーが自分にはどれくらいあるのか?」
これは生活の状況を詳しく聞くことで、「もう少し動いても大丈夫ですよ」「ちょっと頑張りすぎたので適度に息抜きを挟んでいきましょう」という、うまい塩梅を診察のときに探っていくことが大切です。

昨日クリニックに来られたパーキンソン病の患者さん。
とても几帳面で頑張り屋さんの彼女。家の掃除・料理・洗濯をきちっとこなさないと落ち着かないとのことで、とにかくじっとしているのが苦手。主婦としてこれまでながくやってきた自負を当然お持ちですので、パーキンソン病と診断を受けてからも最近まで、家事を同じようにこなしておられました。
ところが、ここ数カ月はドーパミンのバッテリーが切れ(=電池切れ)、調子が悪い時間が増え、動けなくなったり、辛い腰痛に悩む時間が増えていきました。

この患者さんに、ドーパミンのバッテリーを増やすために多少の薬物調整もおこないましたが、
一番重視したことは、動きっぱなしだった家事をうまく加減して、息抜きを挟んでもらうことです。
その結果、ドーパミン電池の消費を自分でうまくコントロールできるようになり、調子が安定していきました。
昨日はとても調子が良いと、終始大きな声で笑いながら話している姿が印象的でした。

パーキンソン病の患者さんは、几帳面で頑張り屋さんが多い印象を持っているのですが、
ときに「○○しないといけない」という気持ちが、ドーパミンのバッテリーを小さくさせてしまい、
そして日常の家事を頑張りすぎてドーパミンをどんどん消費してしまい、結果電池切れしてしまう
…このようなことも珍しくはありません。

これまでの習慣を変えることは大変勇気が必要なことですが、
「じょうずな適当加減」を取り入れることで、きっと身体の調子が良くなること実感できるはずです。
そのためには家族の理解や協力が不可欠になりますので、このお話しはご家族にも是非伝えたいことのひとつです。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩